2009/12/24 14:38:18 [901]
2009/12/23 13:5:49 [912]《上のタイトルが決まったあたり・・・》 「装いも新たに新スタートか・・・タイトルは決まったな・・・。」 「ファイル・・・前回も言ったけど、次元を超越したことを言うのはやめてくれ・・・話が進まないから。」 「わ、私に話しかけるなこの変質者!」 「・・・。」 何で俺はそこまで言われなきゃいけないんだ・・・。顔にあからさまな不満の色を浮かべつつ、少年は旅のための荷造りに専念した。 あの後、ミシェルが話した話はとんでもないものだった。 『紅蓮の大賢人?』 『そう、彼の伝説は、この国の起源までさかのぼ・・・。』 『サクッと話せ!』 『淡白なやつめ・・・そんなんじゃ、誰からも相手にされんくなるぞ!』 『お願いですから早く話していただけませんか?』 再び、ファイルを軽くキレさせたところで、ミシェルはようやく話を進めた。 曰く、西の魔物が住まう山脈の奥地に、この世のすべてを知るといわれる、賢人が住んでいる。彼を訪ねれば、元の世界に戻る方法がわかるかもしれないということだった。 『じゃがあまり勧めることはできん。』 『どうして?』 『その山脈の魔物が異状に強くてな。誰一人として帰ってきたものはおらんのじゃ・・・。』 ミシェルの最後の言葉を思い出し、少年は少し震える。 「まったく。絶対生き延びて帰ってやるからな・・・。」 今だ見たこともない魔物たちに恐怖しながらも、少年はそれでも、諦めようとはしなかったのだった。
2009/12/23 13:4:46 [125]「・・・。」 タメを・・・。 「って、しつけーよ!」 容赦ないとび蹴りが決まった。 「き、貴様!仮にも一国の女王たるわらわに向かって何という無礼を!」 「仮にもって自分で言っている時点で悲しくならないのか、お前!」 「まぁ、確かに文字数について配慮しなかったのは筆者にかわいそうなことをしたと思うが・・・。」 「次元を超越した話をするのはやめろ!」 話の内容が、崩壊しそうなせりっふだった。 「ああ、もういいですから話を進めてください!城壁ぶち壊すほどの威力を持った拳で殴られたいですか!」 ファイルの軽い恫喝に、ミシェルは冷や汗をかきながら、何とか答える。 「やつの名は《紅蓮の大賢人》。《万象の図書館》の管理人じゃ。」
2009/12/23 13:4:37 [678]「そ、それで一体どうするつもりだ・・・・。」 「あは!陛下その前にそのむかつく笑い引っ込めないと私の怒りの鉄拳が貴方を粉砕しますよ!」 「いや、ちょっと待て、ファイル!それはしゃれにならない!お前の魔法はただでさえそういったことに特化しているんだから!」 真っ青になって玉座から逃げ出すミシェルを見つめながら、少年は大きく溜息をついた。本当にここの王様は見た目といい性格といい王様らしくない・・・。 「だが、それは確かに困ったことになったのう。仮にもワシの近衛連隊の第一連隊隊長・・・いや、この場合花子か・・・が、常に誰かに魂を握られているというのは少し都合が悪い。」 「・・・!アンタは、こいつの本名を知っているのか?」 「もちろんじゃ!近衛が反乱をおかしたとき、そうすればアッサリ止められるじゃろう?」 「・・・。」 そういったことを本人達の前で言うのはどうかと思うが・・・他人ごとなので首は突っ込まないでおいた。 「仕方がない。あの人のところへ派遣するか。」 「あの人。」 「おぬし、自分の世界に帰りたいのじゃったな?」 「ああ。そうだ!」 「それで、花子は本名を知られた人間を消したいと!」 「ちょっと待ってください!それだと私がこの子を殺したいみたいじゃないですか!」 ファイルからの文句は完全に黙殺し、 「だから、唯一この世界から少年を送り出せるかもしれない人間を紹介しようと言うのじゃ。」 ミシェルはそう続けた。 「それは一体誰なんだ?」 「そのものは、孤高にして、天才。孤独にして、博識。この世のすべてを知る男・・・。」 そこで、ミシェルは言葉を切り、たっぷりタメを・・・ 「・・・。」 タメを・・・ 「・・・。」 タメを・・・。 「・・・。」 タメを・・・。
2009/12/23 13:3:36 [205] 《外伝》 私の弟は、昨夜から姿を消してしまっていた。心配のあまりゲッソリとやつれた両親の話だと、肝試しに行ったんだそうだ。 「あのバカ・・・どこ行ったんだよ!」 私は泣きそうになりながら必死に弟の姿を探した。学校、公園、図書館、レストラン各種にカラオケボックス・・・。病気以外で休んだことがない私がわざわざ学校をサボってまで探してやっているのに、弟は見つからなかった。 その時、私は一人の少年に出会った。右目に漆黒の三日月形の傷が走っており、少しだけ左右の目の開き具合が違う少年は、無造作に伸ばした長髪を、いいかげんにゴムでまとめながら、平然とこういった。 「《** **》のお姉さんですね?彼は無事ですが二度と戻ってきません。ご愁傷様です。」 それだけ言って、さっさとどこかへ行こうとする少年の襟首を捕まえ、私は出来るだけ優しい笑みを浮かべてこういった。 「てめぇ、何か知っているんだったらとっとと吐け!絞め殺すぞ!」 口調も変えておくべきだったと今は後悔している。せっかくの今世紀最大の私の素晴らしい笑顔が台無しになったことを私は悟っていた。 「ぐぇ・・・。か、彼は《一方通行世界》にいったんですよ!二度と戻れない、冒険世界への片道切符を掴んでしまったのですから・・・。」 その少年が話したことは、信じられないものだった。 そして、数時間後、私の前に鏡色の門が出現する。私は少年を引きずって私はその中へと飛び込んだ。だがそれは、また別の物語。
2009/12/23 13:2:54 [189]「あの、少年君。」 「その呼び方は非常に不本意だけど、なんだ?」 「そろそろ私の部屋に帰して欲しいんだけど・・・。」 「ここはお前の部屋だ!」 ぴかぴかに掃除された、己の部屋に動揺を隠し切れず、キョロキョロするファイルに溜息をつきながら、少年は次の部屋へと取り掛かるために、一枚の扉を開ける。 「あそこは物置で、開けると・・・。」 「ぎゃぁあああああああああああああああ!」 凄まじい轟音とともに、ギュウギュウに詰め込まれた雪崩のように少年に襲い掛かる。 「あ、あの大丈夫・・・?」 心配そうに声を掛けてくる、ファイルに少年は怒りで全身をブルブル震わせながら、のっそりと立ち上がる。 「あ、ん、た、はぁあああああああああ!」 噴火一歩手前で行った少年の目の前に、一枚の紙切れが落ちてきた。 「あぁ?何だ一体!」 「あ、ちょっと待って!それをみないでぇええええ!」 その紙切れには、複雑な模様とともに、一つの名前が書かれていた。 「藤崎花子?」 「はう!」 その時、ファイルが、自分の胸に手を当て、ビクンとのけぞる。 「な、何てことを・・・。」 「これ・・・もしかしてお前の、本・・名?」 ファイルは目にいっぱい涙をためながら、こっくりと頷いた。
2009/12/23 13:2:21 [423]初めて入る女の部屋だ。いくら相手が粗忽な男に混じって剣を振っている少女だからといって少しぐらいは期待してはいたのだ。 「・・・。」 でも、いやだからこそ、これは無かった。 「どうしたの?適当に座って。」 「どこに・・・。」 少年は部屋を見回し、愕然とした。散らかりっぱなしの食品類はまだ許そう。この世界には冷蔵庫が無いみたいだからしょうがない。だが、おそらく貴重なのであろう分厚い本は無造作に積み上げられところどころページが折れていたり、そのほかの食器や、調度品にはすべてひびが入っていたり、部屋の隅には無数の蜘蛛が巣を張っており、白い壁のようになっていたり・・・。極め付きは下着まで無造作にほったらかしにされているあげく、その上を黒い脂ぎった昆虫が歩いていた。 これはひどい。少年はあまりにひどすぎるこの惨状に涙が出てきた。その時、その昆虫が少年の顔に張り付いた。 「あっと、ゴメン。しつけが行き届いていなくて・・・。」 なんだかもうペット気分のファイルのセリフに少年はギリッと奥歯をかみ締めながら、絞り出すような声で呟いた。 「ファイル・・・すまない。五分だけ俺に時間をくれ。」 「?」 「俺が安心して住めるようにこの部屋を少し綺麗にしたい。」 少年の戦争が今始まった。
2009/12/23 13:1:51 [300]「言霊ってしっている?」 「むしろ明らかに西洋っぽいこの世界で聞いたことのほうが驚きだけど・・・確かオカルトの話だよな?」 「あえてバカっぽく言えばそうね。」 「喧嘩売っているんだな?そうなんだな!?今機嫌悪いから受けてたつぞ!!」 少年は大声を出して、ファイルに掴みかかろうとするが、アッサリ足を払われて、地面に転んでしまった。 「くそ・・・第一連隊隊長の肩書きは伊達ではないか!」 「素人転がしたくらいでそんなこと言われてもねぇ・・・。」 心底困った顔をするファイルだが、とにかく、話を続ける。 「この世界ではそのことは、ただの迷信ではすまないわ。特に名前に関することは・・・」 「もし知られたらどうなるんだ?」 「魂を握られたのと同じと考えなさい。すくなくとも無事ではすまないわ。」 「・・・。」 何かとんでもない世界にきてしまった気がする。 「だから、みんな本名は明かさないわ。ロンギヌスにも『異界の〜』とかがついていたでしょ?」 「ああ、たしかに・・・って、ちょっと待て。だったら国のトップが堂々と『ミシェル・ウンタラカンタラ・・・』って名乗っているのはまずくないか?どう考えても本名だろ、あれ。」 そう、確かにここの女王(と呼ぶには抵抗のある容姿だったが)はやたらと長ったらしい名前を名乗っていた。 「ああ、あれは王家に伝わる代々の二つ名で・・・。」 「王族ってやつは暇なんだな・・・。」 「む!失礼なことを言わないでよ!私の上司なんだから。」 普通の女の子のようにほほを膨らませつつ、ファイルは一つの古本屋の前で立ち止まった。 「ここが私の下宿なの。」 「ふ〜ん。」 「上がりなさいな。」 「は?」 「しばらく面倒見てあげるわ。どうせ行くところ無いでしょう。ちなみにこれは女王命令であって、他意とかは一切無いのでそこのところはよろしく。」 「・・・」 そう言って、さっさと古本屋の2階につながる階段を上っていくファイルを見送りながら、少年はさっきのセリフの意味を考えた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 つまり、年頃の男女が二人きりで、共同生活と言う図式が出来上がる・・・。 「って、ええぇえええええええ!」 彼女いない歴17年。クラスメイトの間ではある意味ミラクル君と呼ばれる彼には、少しハードルの高い事実だった・・・。
2009/12/23 13:1:17 [649]グッタリ落ち込んだまま男子寮を出た少年は早朝の街を歩き始めた。 『まぁ、住めば都って言うし。ここの人たちは異世界の住人になかなか寛大だから、生きることに苦労はしないと思うぞ。』 日本ではなかなか聴けない言葉で励まされた・・・。普通に過ごしていれば、日本では生きることは大前提となるはずなのだが・・・。あの人どこから来たんだろうか? その時、一瞬少年の視界がブレた。 「あれ・・・?」 「あれ。こんな所で何をしているの?」 その時、白いワンピースを着た、桃色の紙を持つ少女が少年の前に現れた。 「ん?誰ですか?」 「ああ、解らないか。大抵の人はギャップが激しいって驚くからねぇ。」 そう言うと、少女はいままで縛らずにながしていた髪を手でまとめてポニーテールのようにし、少しだけ顔の表情を厳しくする。 「これで解るか?」 「あ!あんた!」 「自己紹介がまだだったな。私は王立近衛連隊第一連隊隊長《閃光のファイル》だ。宜しくな。」 * * * 「俺としては、どっからどう見ても俺と同い年のお前が、近衛連隊一番の実力者達が集まるとロンギヌスさんが言っていた第一連隊の隊長だってことに、非常に驚いているのですが、それもまぁ無視して一言だけ言わせてくれ。なんで、ここから出られないことを始めに教えてくれなかった!」 「私の任務は、新しい来訪者の保護であって事情説明ではないわ。」 顔に似合わず冷たいことを言いながら、少女は紙袋から取り出した、長いパンをムシャムシャ食べている。ちょうど商店街だったので、店を開き始めた人々が次々と声を掛けてきた。なかなか人気があるようだ。 「そういえば、あなた。まだ誰にも本名明かしていないでしょうね?」 「ああ。ロンギヌスさんもそんなこといっていたな?どうしてだ?」 「それは・・・」
2009/12/19 20:24:3 [648]とりあえず始めから乗せています。読みきれないという意見が多かったので。 でも感想がまったく来ません。寂しいですT−T
2009/12/19 20:23:17 [820]女王ミシェルとの謁見は終わり(というか、これ以上はミシェルがキレずにいるのが難しくなったため切り上げた)少年はロンギヌスの案内で、近衛連隊の隊員たちが住んでいる男子寮へと足をはこんでいた。 よく言えば長年使い込まれて味が出た、悪く言えばボロッちいアパートみたいな男子寮の中にあるそれないりに広い食堂で、ロンギヌスと少年は話していた。 「俺の名前は《異界のロンギヌス》一応近衛連隊第二部隊の隊長をしている。もちろん本名じゃないぞ。」 「俺は・・・」 「ああ、いい。名乗るな。」 「?」 「それについてもおいおい説明はしていくが、今はお前の用件のほうが先だな。確か、お前の世界に帰る方法が知りたい、だったよな。」 「はい。」 「単刀直入に言わせて貰おう・・・無理だ。」 「は?」 「この世界の有史以来、別世界から渡ってきた、ここから出て行ったものはいない。」 「う・・・そだろ。」 「だからこの世界はこう呼ばれているのさ。one-way traffic fantasy 。一方通行世界と。」
2009/12/19 20:22:29 [76]「な、なんじゃ!その不満そうな顔は!」 「いや、だってさ。俺アンタに色々聞いてこの世界から出る方法を探そうとしていたんだぜ。それなのに、こんなガキが女王だなんて・・・絶望するしかないだろ?」 「一国の王に対する口の聞き方ではないな?地下牢にぶち込まれたいか?」 普段の少年なら、ビビってしまうほどの迫力が含まれた言葉だったが、何もかも諦めてしまった少年にとっては、相手がどれほど怒ろうがどうでも良かった。 もう、これからの人生に味わうであろう不幸を一気に受けてしまった程の表情で落ち込む少年を見かねて、女王ミシェルは寛大な態度で、先ほどの暴言を許し、話を聞いてやることにした。 「まぁ、何か悩み事があるなら聞いてやるぞ?」 「ガキに話してもねぇ・・・。」 やっぱり殺そうと再び決意し、とりあえず地下牢送りの書類にはんこを押そうとしたその時、 「近衛連隊、第二から第五部隊ただいま魔物討伐より帰還いたしました。」 暑苦しい大声とともに、一人の巨漢の騎士が入ってきたため、やむなくその作業を中断する。この男も異世界から渡ってきたため、少年のような異世界人には好意的なことを知っていた。そんなやつの目の前で、地下牢送りを申し付けるのはさすがにまずいと思う程度の分別は持っていた。 「《異世のロンギヌス》勤めご苦労であった。兵舎で休め。」 「は!」 「!ちょっと待ってください。あなた他の世界から渡ってきた人ですか!」 「ああ?そうだが?」 「手がかりみつけたぁアアアアアアアアアアアア!」 少年が突然上げた大声に、ミシェルはひっくり返り、ロンギヌスは思わず固まるのであった。
2009/12/19 20:21:57 [857]正直言って予想の範疇を超えた光景だった。 「何だこれ・・・。」 小年が桃色髪の少女に呼ばれ部屋を出たときには廊下に等間隔で兵士が並んでいたのだ。ざっと見積もって、300メートル弱の廊下に左右あわせて300人ほどいた。 「でも、これだけ兵隊集めているって事は・・・おれ、警戒されている?」 「そういうわけではないのだが・・・まぁ付いて来い。」 そう言うと、少女は苦笑しながら兵士だらけの廊下を悠々と歩き出す。少年はその後ろについて、恐る恐る歩き出した。 「今城中の兵士魔物討伐に出払っていてな。」 「え、じゃあ、これは一体・・・?」 「陛下の幻影魔法だ。一応来訪者に見栄を張らないと城の体面が保てないのでな・・・。」 「それ、教えちゃいけなかったんじゃ・・・。」 「なに、陛下はそこまで狭量では無いさ。」 そして、少年はまるでドームのように広い一室へと通された。 『失礼のないようにな。』 少女はそう言って自分に釘を刺したが・・・ 「この場合はどうすればいいのだろうか?」 「何がだ?」 少年の目の前にある巨大な玉座に腰掛けていたのは、どこからどう見ても、十代前半の少女だった。 「ようこそ、ファンタジー王国へ。童がこの国統治者ミシェル・サンタクルシ・エ・ファンタジアだ。」 「もう何でもありかよ、この世界は。」 果たして、少年は元の世界へ帰れるのだろうか?
2009/12/18 20:59:46 [408]オレンジ色の街灯に照らされたレンガ造りの町には、しんとした冷たい空気が流れていた。それを、案内された城の仲から観察しながら、率直な感想を少年は漏らす。 「なんだか暗い街だな・・・。」 「夜だからな。こんな時間に人がウロウロしている方がおかしいだろ?」 心配になって時間を聞いてみたら、もう夜中の四時を回っていた。 「嘘だろ、いつの間にそんなに経っていたんだ!」 「とにかく、お前は城の宿舎に来てもらう。朝一番で平価に謁見してもらうから今日は寝るな。」 そう言うと、桃色が見の少女は、少年を置き去りにして、どこかへいってしまった。 位階にたった一人で放置された少年は、落ち着き無く、案内された部屋の中をグルグル歩き回る。 一体自分はどうしてこんなところに来てしまったのか?あの鏡が原因だとすると、帰る方法が全く思い浮かばない。 「父さん・・・母さん・・・姉さん。」 反抗期に入り普段は鬱陶しかった家族達も、こんな状況になるとひどく恋しく思えて来る。その時、あの桃色が見の少女が言っていた言葉が、少年の頭をよぎった。 『お前のように違う世界から来た・・・。』 これはつまり、自分以外にも、この世界にやってきた人間がいるということだ。 「じゃぁ、その人たちに話を聞けば、帰る方法がわかるかもしれない・・・。」 少年お胸にともった小さな希望の火は、朝日とともに、少しずつ大きくなっていくのだった・・・。
2009/12/18 20:59:11 [506]まるで鏡のように静かな水面を切り裂き、船は進む。 その上で寝転ぶ少年の頭の中には、普通の世界においてきた、家族のことがちらついていた。まさか肝試しで入った学校の鏡に呑み込まれるとは・・・。しかも気が付いたら見たことも無い場所にいるし・・・。本当に世の中何が起こるかわからないものだ。 「おい、俺たちはどこに向かっているんだ?」 少年は、船の後ろで櫂を操る少女に向かって、尋ねてみた。 桃色の長い髪をなびかせ、金のタカの刺繍が入った青い軍服を着こなす少女は苦笑いをしながら、答えてくれた。 「私達が向かっているのは、ファンタジー王国。この世界を束ねているところだ。」 「なんかそのままな名前だな・・・。」 「お前のように違う世界から来た者はみんなそう言うな。こちらの世界では《聖なる希望》と言う意味なのだが・・・。」 その時、船をオレンジ色の光が照らした。 「ついたぞ、これがファンタジー王国だ。」 オレンジ色の街灯が無数に立ち並ぶレンガ造りの町。それが、少年が始めて見たこの世界の町の姿だった。
2009/12/18 20:55:46 [798]無数の星がきらめく砂浜で、少年はボーっとしながら、寝転んでいた。その隣には立てひざで座る少女が一人。桃色の長髪を潮風になびかせ無言で座っている。 「おれさ、昨日まで普通に高校に通っていたんだぞ?」 「コウコウ、と言うものがいまいち解らないが・・・そうなのか?」 「それが何でいきなりこんな世界にほうりこまれてんの?」 「そんなこと私は知らない。神様にでも文句を言え。」 「・・・。」 「唯一つだけ言えることは・・・。」 「なんだ?」 「ようこそ。ファンタジーへ・・・。」 静かになった浜辺には、ただただ波の音が響き渡った。
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