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小説を書きます。。。

千里 No.183|2009/9/14 18:38:29

タイトルはまだ決まっていませんが、小説を書きます。

<あらすじ> 14歳という年齢でデビューした『千里』は、謎の多い作家である。一冊の書籍を唯一の手がかりとして、ごくごく普通の女子高生・如月夕夜は『千里』の正体を暴いていくことを決めた。

 

千里

2009/9/26 1:16:1 [52]

 

千里

2009/9/14 20:0:52 [929]

「そんなにすごい小説でもないと思うんだけど」
「そんなこと言うの夕ちゃんだけだと思うよ」
 同じ下校路を辿りながら、二人は「アスタリスク」についての論議をしていた。
 文学の部類しか読まない夕夜だが、14歳という年齢の『千里』にちょっとした興味を持ち、先ほど図書室で読んでみたのだった。しかし、皆がみんな面白いと言うその物語は、彼女にとってはあまり面白くなかったという。
「そりゃ人それぞれ好き嫌いもあるでしょ。夕ちゃんは自分の好きなものしか読まないからさ…」
「好き嫌いがあったら好きなものばかり読むのは当然でしょ」
「ぅ〜…っ。もうっ、そういうの屁理屈っていうんだよ」
「いいわ。理屈は好きだから」
 この口車に琴波は勝ったことはないので、途中で諦める。隣に並ぶ夕夜を少し見上げて、彼女が口元に笑みを湛えているのを見つけた。
「どうしたのさ?」
「ううん。あの物語の場面、この近くの景色と似てると思って」
 夕夜はさっき読んだばかりの文章を思い出す。「楓と銀杏が交互に並ぶ並木道。真っ直ぐ行くと右手に小さな公園があるのだった。」この文章がそっくりそのまま絵になったような景色の中を、二人は歩いていた。
「あー… そういえばそうかも。偶然じゃない?ぐーぜんぐーぜん。こんな景色なんてどこでもあると思うよ」
「そうかしら」
 夕日でオレンジ色に染まった景色を眺め、夕夜は考えていたことを琴波に告げた。
「『千里』って、この近くの高校に通う子じゃないかしら」
「えっ?? なんで、そんな大袈裟じゃないっ?」
 それこそ大袈裟なリアクションをした琴波に、夕夜はおよそ高校生とは思えない艶やかな笑みを見せ、いたずらっぽく笑った。
「『千里』の正体、暴いてみたくない?」
 一度も見たことのない夕夜の表情に、琴波は少し固まってから、勢いよくうんっと頷いた。 

千里

2009/9/14 18:50:18 [260]

 図書室の一角で、黒い髪を背中まで垂らした少女が本を読んでいる。紺色のセーラーはまだ真新しく、一年生だということが解る。最後のページを読み終わり、ぱたりと音を立てて本を閉じて、顔を上げた。三階の窓から、橙色の夕日が見えた。
 もう一度、白いハードカバーの本に目を落とし、彼女は「ふん…」と鼻を鳴らした。表紙には「アスタリスク」、作者に「千里」と記されている。
「これがベストセラーね…」
 やや低めの澄んだ声で呟き、辺りを見回す。図書室にいるのは、彼女と司書の女の子だけだった。呟きが聞こえたのか、二人視線が交わる。
 本を棚にしまい鞄を掴む。ネームには「如月夕夜(きさらぎゆうや)」と綺麗な字で書かれていた。彼女の名前らしいが、男っぽい名前だとよく言われる。自身でもこの名前は少し違和感があったが、高校生となった今ではもう慣れてしまった。
 司書の女の子の所に歩んでいき、声をかける。
「松宮、帰ろう」
「いいけど、琴波(ことは)って呼んでって言ってるじゃん?」
「噛みそうだから嫌なの」
 淡々と告げる夕夜。あきれたように笑って琴波も立ち上がり、同じように鞄を持って図書室を出た。 

 
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