2010/7/26 5:32:11 [953]〜第3話〜 次の日、さっそく俺らは西町展望台に向かった。展望台は標高300m近いところにある。登山(?)道もあるが時間が惜しいので、ロープウェーを使うことにした。 上に着き、受付を通り過ぎようとすると受付の人に声をかけられた。 「すみません」 「はい?」 「いえ・・・あの・・これを・・・」 「はあ。」 渡されたのは折られた便箋だった。 『ハルカさん、鈴音さん、こんにちは! 受付から左を向くと大きな木があると思うのでそこへ行ってください。 途中トイレで道は終わっていますが、建物の横から裏に回ることができます。 でわ 』 確かに左を向くと大きな木がある。道もちゃんとあった。同時にしゃべる。 「仕方ないな。」 顔は笑っていたが、内心かなり緊張している。 『消えた6人と何か関係があるんだろう』 そんなことを考えながら気の方に歩みを進めていたのは、俺も鈴音も同じだったと 思う。
2010/6/27 5:36:24 [318]〜第2話〜 次の日も、昨日と同じように喋りながら帰った。話題はもちろん、あの手紙の事だったが。 郵便受けの中を確認する。手紙は入っていなかった。 ため息をつきながら鈴音と顔を見合わせる。だがすぐにそのため息は再びのみこまれる運命となる。 部屋に入ると机の上にボイスレコーダーがおいてあった。鈴音が目で合図してくる。 俺はいやいや再生ボタンを押した。 「こんにちは!今ヘリウムガスを吸いながら喋ってるよ。き 昨日は倉田 大地さんが消えたね。教えてあげる!もう小森さん、目黒さん、神野さ んなど5人を消したよ。 もう一つね。えーと・・・・・・そうそう、西町展望台に行ってごらん。すごくいい物が見 つかるよ。 じゃあね 」 録音はそこで終わった。 「これから行く?」 質問をなげかける。 「いや、明日行こう。土曜日だし。それより本当にもう消えたのかを聞くのが先だ。」 「そうだな。」 二手に分かれてそれぞれ10人くらいずつに聞いてみたが、誰ひとりあの5人を知っていると答えた者はいなかった。
2010/6/26 5:30:40 [658]〜第1話〜
桜もちらほらのこの季節、俺内海 遥は双子の兄の鈴音と校舎から寮へと続く長い廊下を歩いていた。 ちなみに俺らは私立双星館学院に寮生として通っている高等部三年のせいとだ。 鈴音とは、部屋もクラスも同じなので毎日一緒に帰るのが当たり前になっている。
部屋の5m位手前に来たとき、鈴音が 「珍しく手紙が来てる」 とつぶやいた。確かに手紙が郵便受けの中につっこまれている。 少し走り、手紙を抜きとって急いで部屋の中に入る。 あの消失ゲームはこの手紙がはじまりだった。 一応空ける前に調べてみる。 「何のへんてつも無い茶封筒だな。ただ・・・・・・・」 「宛名も送り主の名前も 無い。」 「おれたちあてなのか?」 「そうでなきゃなんでこの部屋の郵便受けにつっこんであんだよ。」 「それもそうだな。よし、開けよう。」 はさみを持ってきて封筒を開けてみると、なかに一枚の手紙が入っていた。
「こんにちは!というより初めまして。 これから『消失ゲーム』を始めるよ。 今日から毎日お二人さんの周りから人が消えてゆくよ。そして消された人の対しての 他人の記憶も消えるよ。 さて、今日はあなた達の友人の倉田 大地さんを消したよ。ためしに、周りの人に聞 いてごらん。皆知らないから。ちなみにあなた達と私だけ、消された人に対しての記 憶が残るよ。 では」 「何だって!」 俺達は同時に叫ぶと部屋を飛び出しいろんな人に尋ねてみた。 「倉田 大地という人を知っているか」 と。元から知らないなんて人はいないはずだが、驚いたことに誰一人 「知ってる」 と答えた人間はいなかった。手紙の内容は事実というより現実だった。
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